『広田弘毅』読んだ

 

 広田弘毅について書かれている有名な小説の『落日燃ゆ』を読んだことがないので、彼がそこでどのように書かれているかは詳しくはわかりません。しかし、この本を見る限り本当に彼の評価は難しそうですね……

 個人的にはやはり陸軍に何も言えず(言わず)に彼らの暴走を許したり、ポピュリズムに流されたりと、肝心なところでの不甲斐なさは言い逃れできないと感じました。

 本書は7章までありますが、①外相になるまでの時期 ②外相&首相を務める時期 ③その後 という3つのおおきな区切りがなされています。①の部分では著者が広田をかばうような表現がところどころに見られ、広田に才覚があったという印象を持たせるには十分です。そしてそのうえで②の時期において、広田が精彩と熱意をだんだんと欠いていき、ただただ不甲斐ない首相or外相になっていくという構造になります。この構造によって、才能がありながらも軍部に強く出れない広田が段々と諦観的になっていくように見えてしまうのですが、これは果たして本当なのでしょうか? 外交官試験に一回落ちているとはいえ主席で合格する人間が優秀でないわけ無いといえば、たしかにその通りではあるでしょうが、外交官時代も別段優秀であったとは感じませんでした。結局この著者もこの本の副題にあるように「悲劇の宰相」という呪縛から逃れられなかったのでしょうか

 

 ところで、こんなに偉そうなこと書いてきたんですが歴史系の新書をまともに読んだの実は初めてなんですよね。この本は書店でたまたま手にとってなんとなく読み進めたのですが、面白かったのでそのまま購入しました。やっぱり本屋ってそういう出会いがあるのがいいですよね。緊急事態宣言化では、本屋も図書館もしまっていたので解除はありがたいものです。