『LGBTを読みとく クィア・スタディーズ入門』

著者に対してここまで信頼感が芽生えた新書は本当に久しぶりな気がする。著者の知に対する誠実さ、また正しい知識が必要でありそれを提供することにひたむきな態度が伝わる。怒りではなく、あくまで事実のみに基づいている点もそうである。

差別や偏見に対して最も必要なのは知識であるというのは、本当にそのとおりだと感じた。「悪い人だから」、「ろくでもない人だから」というのはまぁあるかも知れないが、やっぱり、性的マイノリティのことを知らないけど、差別はしないし「同情」してるよみたいなスタンスの人が多いと思う。「普通」の押し付けについては自分もよく感じていた。一章でこの手の人々を手厳しく批判している様子を見て、もしやと思ったら、素晴らしい本だった。

性自認性的指向。言葉は聞いたことがあったが、改めて定義を知りトランスジェンダー(広義)と同性愛者が異なることも恥ずかしながら初めて知った。「セックスが女性で性自認が男性であるトランスセクシャルの人の性愛の対象が男性であった場合、その人はトランスジェンダーであり同性愛者である」。

はじめに「良心」でなく知識が必要であると述べ、語の説明をし、歴史的経緯を述べ、その過程で成立したクィアスタディーズの基本を述べ、その考えを応用するといった感じ。最後にこの本を基礎として、それに基づいて各論について詳しい書籍を紹介する。これは初学者必読な気がする。

今期ベスト新書かな