千と千尋の神隠し

映画館で再上演が行われていることを知り、授業サボって映画見に行ったのが7月の半ば。一部の場面を金曜ロードショーで少し見たことがある程度だった自分は、なんとなく教科書的で堅苦しい作品のイメージがあった。期待値は正直そこまで高くなく、まぁ狭い大学寮にいても腐るだけだしちょっと映画見てみるかと思った程度。

 

しかし、これが最高に良かった。

 

当時はオンライン授業で、おまけに慶應にいた頃の単位が使えたのもあって時間だけを持て余していた。そのためアニメを片っ端から見ていたが、好きなアニメ自体がそこまで多くなかったこともあって段々とアニメが飽食気味になってきていた。そのような時期にこの作品を見たという背景が作品の評価にどれほど大きく働いたかは不明だが、新鮮な気分になったのは確かである。

 

一回目に見て一番心奪われたのは、人間からボイラー室のススにいたるまで登場しているキャラクターすべてがものすごく生き生きしていたことである。表情の変化や細かい動作が豊富でキャラクターが何を感じ何を思っているのかが手にとるように伝わってくる。余計な言葉や説明的なことなしに見せているのがとても良かった。

これはジブリ作品全般に言えることだが、本作では特に作中の雰囲気が最高にいい。なぜ、どのような理由で良いのかを今の自分の言語化能力で述べることは難しい。主人公の純真さや真っ直ぐさ、憎めないキャラクターしかいないこと、生き生きとした描写、音楽とかまぁそういったもろもろすべての要素がこの独特の素晴らしい雰囲気を作り出してるみたいな適当な説明しかできない。

 

結局一回目の視聴後、文字通りにこの作品に心奪われてしまい、その後今日に至るまで5回劇場に足を運んだ。そしてこれを書いているいるのが 2020/08/17 だが、翌日も行く予定である。

自分は作品はなるべく感性→理性という順番で見ることが多い。一回目純粋に作品を子供のように楽しんだあとで後にいろいろ考えて二回目以降を見るというものである。そしてこの定形に当てはめやすい作品を好む傾向にある。同じ時期に見た他のジブリ作品(風の谷のナウシカもののけ姫)なんかもまさにこの定形で作品を鑑賞したし、それがやりやすい作品だった。

 

何回見ても千尋が泣きながらおにぎりを食べるシーンはいろいろ想像して自分も泣きそうになる。その一方でエンディングに入る直前の最後のシーンでトンネルの先を見つめる千尋が何を考えているかを具体的に考察して言語化するのはまだ出来ない。おそらく何万という数の人がそのことについて考察したものをネット上で読むことは可能だが、なんと言えばいいか自分のなかで定まっていない解釈などをネット上で見たくないのである、汚染(表現悪いが)されてしまうような気がして(これについては色々思うことがあるので別に書く)。

他のシーンではキャラクターの動きによって感情が手に取るようにわかるが、最後のシーンだけはそれが出来ない。辛い。こういうことがあると、国語の大切さとか作品の鑑賞の仕方とか、そもそもの頭の出来とかいろいろ余計なことまで考えてしまう。

 

でもまぁ焦ってはいないので気長にいろいろ考えようと思うし、それが楽しい。